君は塀
君は年老いた塀
小さな田舎町にある家の塀
その家で僕は生まれ育った
戦争のころは5家族が住んでいた家
君は家を護った
君は家族を守った
今日もいつものように子供たちが君の前を通って学校に通う
彼等の笑顔とはじける元気は昔からちっとも変わってない
でも人数はずっと減った
君は子供たちを護ってきた
だってきみは優しくて暖かい心の持ち主だから
でも君は悲しい
皆が君は危険だって言ってるから
君は危険なんかじゃない
だってきみは優しくて暖かい心の持ち主だから
君は皆を守ってきた
君は誰も傷つけてない
でも皆は言う 君の仲間の一人が遠くの町で子供を傷つけたって
僕にはわかる 君が言いたいのが
あれは彼のせいじゃないって
でも君は黙っている
君は危険な塀
皆が言っている
僕は君を壊さなければならない
僕は知っている 君が悲しんでいることが
でも君は黙っている
僕は知っている 君が賢くて暖かい心の持ち主であることを
僕を許して欲しい 君を壊さなければならない僕を
多くの時が流れた
戦争は終わった
家族は町に帰った
残ったのは僕の家族だけ
もうひとつの時が過ぎた
僕と弟は町に出て行った
残ったのは僕の父と母
やがて父が死に
そして母も
残ったのは誰もいない 年老いた塀以外は
そして家の新しいご主人がやってくる
君にはわかっている
自分の役目が終わったことを
新しい家族を守るのは新しい塀でなければならないことを
賢い君にはわかっている
君は賢い塀
君は悲しい塀
TG
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